はじめに
今記事は現在 Netflixで配信中の作品「悪魔くん」のネタバレを御多分に含みます。ネタバレが嫌な人は読むことをお控えください
率直に言わせてもらいます
死ぬほどつまらないです
今作は1989年版悪魔くん(以下前作)の正当続編という触れ込みの作品ですが、そう謳いながら出てきたのは話し方・設定など過去との矛盾・既存キャラクターの改悪。特に既存キャラの改悪は前作を見ていた身としてとても辛かったです。
じゃあ「前作の要素は気にせずにオリジナルとして見れば…」と無理矢理前作との繋がりを切り離してみても、全く感情移入できない主人公・投げてそのまま回収しない伏線・バディ探偵モノとはおおよそ言えないトリックで食い繋いだ話など、どう頑張っても面白く見れるものではありませんでした。
見始めて最初は過去作の愚弄やらでイライラしながら見てましたが後半あたりからその苛立ちさえ無くなり、残ったのは何もない虚無でした。幼少期に前作を見ていた身として素直に応援したいという気持ちすら消え去りました。
これだけだと「ただ闇雲に批判してるだけだ」と文句を言われそうなので全12話、それぞれの感想も書き連ねていきましょう。細かいところまで上げるとキリがないので気になった部分をメインにまとめます。
軽いメインキャラ説明
- 風間親子:千年王国研究所が建っている建物の大家。母:さなえと娘:みおの2人家族
- メフィスト2世:真吾の相棒であり3世の父親。現在は慎吾の妹と結婚している
- グレモリー:ワケあって一郎に付きまとう悪魔
- ストロファイア:一郎の謎を握ってる謎の存在
各話感想
1話〜2話
ゲスト:朝凪ヒナが持ち込んだ事件の解決をすると同時に視聴者にキャラクターの説明や「悪魔くんとはどういうモノなのか」をわかってもらうためなのか他の話より長めに尺をとっているがはっきり言って長すぎである。過去の愚弄はまだ少ないものの見ててダレてくる。この時点から作品として怪しいのも珍しいのではないか
今事件の真相は集団レ○プによることが濁しながらも示唆されているがあの明るい作風だった続編を謳って初めから陰鬱すぎる…。
3話
- サタンの心臓を食べたいと言う男と交渉。実際に呼び出すことに成功するが…?
そもそも前作でサタンは初代ファウスト博士*1と相打ちになっているんですが………。今作オリジナルとしての登場ならまだしも口ぶりからして前作のサタンと同一人物の可能性大。
仮に同一だとしても「実は生きていたのだ」みたいな台詞も説明もなく物語は終わるし。前作との初めて大きな矛盾が出て筆者の怒りが爆発した回。
4話
- 「幻の映画フィルム」を探してほしいという男とその側近が研究所へ舞い込む。
今作で一番胸を撫で下ろした回。男の側近はゲゲゲの鬼太郎に登場する"吸血鬼エリート"風の見た目で予告編でもその姿を見せていた……正直このアニメのことだからチンケな引用元オマージュとかされるんだろうなと思っていたがそれはなかった。
ただこの話に登場する悪魔【レヴィアタン】はしっかり水木大先生が描いたものがあるのにオリジナルの姿…。前作は水木先生が姿を描いている名有りの敵は可能な限りその通りに描いているんですがね…。
5話
- 密室の殺人事件と室内にあった赤い釘、2人は2つの謎を追う。
この事件のトリック、死ぬほどチープである。詳しくは作品を見てほしいのだがそこらへんの探偵小説でもあまりやらなそうな簡単なモノだった。これで探偵モノとして売りだそうと言うのは無理があろうと思われる。
そして過去キャラ改悪が酷すぎる。二世と結婚している真吾の妹・エツ子が今回の事件のニュースを耳に入れるシーンがあるが、なんとこれを話のタネにケラケラと笑っている。とても真面目でいじめなどが許せなかった彼女が殺人と聞いて笑うか?本当に製作陣は前作見たのかと疑いたくなり、トリックのチープさ・過去キャラの改悪・安っぽい社会問題提起など今作の酷さが際立ち胃が気持ち悪くなった。
6話
- イースター島に赤い釘があることを知った2人はそこへ向かうが、ひょんなことから事件に巻き込まれていく。
この話では"鳥乙女"についてフィーチャーされてる回……。じゃあ前作12使徒*2の1人「鳥乙女ナスカ」出せや!!なんで1ミリも出さないの!?物語も娘の死を巡った愛憎劇で鳥乙女のワードは飾りだったし…。
今作のタチが悪いところは本編だと6話みたいに出すだけワード出してあとほっぽるくせにエンディングのボイスドラマという本編とは関係ないところで重要な設定をお出ししたりするところ。腐っても続編を謳うのだから、鳥乙女に準えば真吾とナスカの関係とかしっかり本編に組み込んでもらいたかった。
7話
- 議員:出邑の秘書が殺された。その裏には悪魔崇拝組織の影があった。
空気回。陳腐なトリック見せられて終わり。なんとも意味あり気な悪魔崇拝組織も話題に少し出るだけでほとんど筋には関わらない。
8話
- 「悪魔になりたい」と言って2世から離れない少年:まひろ。一方、一郎は「友人を救ってほしい」との依頼を受けていた。
前作で真吾の最高の相棒だったメフィスト2世は何処へやら。堕落しきり、ソシャゲにハマる2世なぞ見たくなかった。前回のスカスカストーリーでガラ空きの心に過去愚弄で追い討ちをかけてくる。
終盤、まひろは親からDV被害を受けていることが明らかになるのだが完全放置でエンディング突入。「陰鬱な事件は続編として合わない」とは書いたが、児童DVは放置で終わらせちゃダメな問題だろうが。せめて終わり側に「彼のところのDVも解決したようだ」くらい入れなきゃ締まらんでしょ。
9話
- 行方不明だった風間家の父が突然帰ってきた。彼が2人の前から姿を消した理由には、悪魔との契約が関わっていた。
帰ってきてなお風間家から姿を消そうとする父に一郎の心が揺れ動く……のだが普段から真吾のことを「クソ親父」呼ばわりし、他者の感情・心情も関係無しの知らず通しだった一郎が急に情に訴えかけてきて違和感しかない。
こういう"感情なんて知らない"みたいなキャラクターが情に語りかけるのは珍しくないし、話としても旨味なのだが、その"心変わりのターニングポイント"を今作は全く描いていないからか上記の違和感に拍車をかける。せめて少しでもそういう場面を描いていれば多少は頷ける内容なのに…。
10話
- クリスマスの日、一郎と3世・真吾と2世、お互いに初めて出会った日のことを語り合う。
ある意味一番平和な回。雑に過去を踏襲しようとして大体裏目に出るし、探偵モノしても面白味もないので何もしないことが一番である。
しかし地味に日本のクリスマス文化を罵っている。6期鬼太郎も似たようなことしてた回あったな…。
11話
急に話が動き始めた…。一郎はその昔、ストロファイアと行動を共にしていたという過去が明らかになるが最終話1歩手前でその設定出されても回収しきれないでしょ。
学校に張られた結界を破るため「12使徒を呼ぼうよ!」と言う3世に対し、「12使徒はみんな他の場所で頑張ってるんだ」と2世…。いや呼ぼうよ。見えない学校って12使徒の、なにより2世自身にとって思い出の場所じゃん。それを「他で頑張ってるから」で片付けたらいかんでしょ。5話・8話といいどこまで過去キャラの格下げたがるんですかね制作陣は…。
12話
- ついにストロファイアと対峙した一郎。3世は一郎に"ある約束"をして単身戦いを挑む…。
最終回。ここまで無駄な回を積み重ね、大事な伏線・過去やらは匂わせてそれっきりなので無理やり回収してやろうと投げやり感が見て取れる。しかもそこまで回収しきれていない。冒頭、破れた結界の中へと向かっていく3世へ2世の「任せた」発言。11話の項でも書いたけど一番見えない学校に思い入れある人がこの事態を「任せた」で済ませちゃダメでしょ。
中盤で3世が「キミは半人半魔だから不安定。魔力暴走するよw」とストロファイアに言われるが前作の鳥乙女ナスカも半人半魔。おまけに暴走も何もない。薄々感じていた「製作陣前作を見てない説」が最終回にしてはっきりしました。筆者は最早出す言葉も無くなった。
そして最終盤の続編匂わせ展開…。グレモリーとの契約として心臓を頂かれる一郎……。いやもう作らないでください。これ以上何をするというのですか。おまけに「続編作らないと一郎あのまんまだよ?続編やんないとね?」と言われているような終わり方なのが非常に癪に障る…。
総評
筆者個人での目線ではありますが、1話に必ず1つは首を傾げるポイントがあります。
初めに挙げた通り"死ぬほどつまらない"が今作に対する感想の全てなんですけど、9話の一郎の心変わりだったり、「あと少し捻ってくれたら…」となるように惜しいと感じれるところは所々にあったりするんです。
ただとにかく前作の未復習・改変が評価の足を引っ張っていて、前作との繋がり・既存ファンへエモいところを見せようとするのが悉く滑っている。それもそのはず改変は未復習が祟って前作と矛盾して改悪と化し、それでいて物語の本筋に無理矢理入れ込むので大事なところがうやむやになっている。
制作陣がこんなザマなので"悪魔くん"である必要がありません。無理に続編にするよりも、完全オリジナルとして作ってくれていたらもう少し抵抗なく見れた気がします。
おわりに
ここまで読んで「悪魔くんちょっと気になった」となった方、1989年版悪魔くんを見ていただければと思います。非常に素晴らしいので。